ADHD
「ADHDかも知れない」と言って受診される方は少なくありません。
インターネット上では『ADHD』という単語がひとり歩きし、専門家でなくとも知っている単語になりつつあります。
しかしこれは、この症状で困っている人が多いという現実の裏返しでもあります。
ざっくりと説明します。
ADHDとは?
Attention-Deficit Hyperactivity Disorderの頭文字を取って、ADHDです。
つまり、Attention-Deficit(=注意欠如)と、Hyperactivity(=多動性・衝動性)を特徴とします。
どんな症状があるの?
以下のように①②③と大きく分けると理解しやすいでしょう。
- ①うっかり、注意障害
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具体的には以下のような症状があります。
- 忘れ物、なくし物が多い。
- 携帯電話や家の鍵などが、家の中や職場、鞄の中でよく行方不明になる。
- ケアレスミスやうっかりミスが多い。
- やるべきことをうっかり忘れてしまう。
- 同時にいくつかの作業や仕事をこなすのが苦手。優先順位が付けられない。
- 指示に従えない。
- 気が散りやすい。
- 宿題や課題を先延ばしにしたり、提出ができない。
- 遅刻が多い。時間が守れない。
- ②多動性
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具体的には以下のような症状があります。
- いつも手足を動かしたり、そわそわ、モジモジしている。
- じっとしていられず、不適切に席を離れたりする。
- 「待つ」「並ぶ」が苦手。
- ③衝動性
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具体的には以下のような症状があります。
- 思い立ったら考えなく行動してしまう。
- 人の会話に割り込んでしまう。
- すぐに怒る、暴力的。
基本的には上記症状が小学校頃から続いていることが診断の決め手です。しかし、社会人になって症状が浮き彫りになる方もいます。多くのイメージとしては『のび太くん』です。小さい頃からおっちょこちょいで何処か抜けていますが、その雰囲気は柔らかく、人当たりが良くかわいらしいです。
通常、大人になると多動性や衝動性は消失します。これが残存する方はADHDと少し違う見方をしなければなりません。
大人になっても『のび太くん』では、やはり社会的に大変です。作業速度が遅く、ミスも多発し、毎日のように先生や職場の上司から叱られます。そのため、自信をなくしてうつ症状が出現し、うつを訴えてメンタルクリニックを訪れる方も多いです。
原因はあるの?
現在、脳内の研究が盛んに行われ、ドパミンやノルアドレナリンという物質が不足していることが原因ではないかと言われています。そのため、ADHDに使用するお薬はこのドパミンやノルアドレナリンを増やす/刺激する効果があります。
病気なの?
考え方はドクターによって異なります。私は『のび太くんが病気ではないように』、ADHDは病気ではなく、『性格傾向』『性格特徴』と考えます。『のび太くんのような人』に診断基準をもうけて病名を付けただけであり、『病気』と考えるのは適切ではないと考えています。要領の良い人/悪い人、回転の早い人/遅い人、話すのが好きな人/嫌いな人、などなど、人それぞれに特徴があって、みんな異なるのです。
困っているのは僕だけ?
いいえ。このような性格特徴を持った方は非常に多いとされており(特に男性に多い)、全体の20%近くになるとする統計もあります。
治るの?
当院では『治す』というよりは、『あなたの弱点が出ないように』するにはどうすればいいのか、という提案、アドバイスをさせて頂きます。性格はそんなに簡単には変わりません。まずは、『嫌いな自分』『自分の弱点』を明確化することです。自ずとやるべきことが浮かんできます。自分を変えたいなら努力を怠ってはいけません。
薬について
上でお話したように、ドパミンやノルアドレナリンを増やす/刺激する薬がADHDの治療薬として使用されます。結果から言うと、効く人にはよく効きます。いくつかの種類があり、その適応については診察室の中で判断することになります。
ADHDで使用するお薬には依存性が危惧されるものもあり、慎重に使用すべきです。そのためには診断も慎重に行う必要があります。当院では、下にある『ADHD診断についての情報提供のお願い 』を診断の一助としています。一部のお薬はこれがなければ処方できないものもあります。
- 《使用方法》
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- ①『ADHD診断についての情報提供のお願い 』をダウンロードして印刷。
- ②近親者(両親、先生、上司、友人、同居人など)にチェックしてもらう。
- ③チェックしてもらった人に同書面に署名をもらう。
- ④初診時に持参する。
かんたんに受診しても良いの?
いいんです。これまで、ご本人は相当お困りであったと思います。ちょっとしたアドバイスと必要時にはお薬を使用し、少しでもその苦悩が減ることを目標に治療提案させて頂きます。